運送業は、経済を支える重要な産業でありながら、資金繰りに課題を抱える事業者が少なくありません。燃料費や人件費の高騰、ドライバー不足、長い売掛サイトなど、日々の支出が先行しやすい構造が原因です。
さらに車両の修理や買い替えといった突発的な出費も多く、資金の流れを安定させることが難しい業界といえます。このような業種構造にマッチした資金調達方法にファクタリングがあります。
本記事では、運送業の資金調達にファクタリングが相性のいい理由について解説します。運送業の特性や、ファクタリングを利用するにあたっての注意点を述べるとともに、ファクタリング会社選び方のポイントについて紹介しますので参考にして下さい。
なぜ運送業は資金繰りが厳しくなるのか?
運送業には、他の業種にない特有な構造が資金繰りを厳しくしているといわれています。
ここでは、運送業がなぜ資金繰りが厳しくなるのかについて、主な要因として次の5点について解説します。
運送業の資金繰りが厳しくなるポイント
不安定な売上
慢性的な人手不足
車両の故障など想定外な出費が発生しやすい
売掛サイトが長い
設備投資に資金がかかる
不安定な売上
運送業では、季節変動や景気動向、荷主の発注状況に強く左右されます。そのため、売上が不安定になりやすいです。繁忙期には受注が急増する一方、閑散期には受注が激減します。
そのため、一定した収益基盤を確保するのが難しいです。
また、売上が増えてもコスト(燃料費・人件費など)も同時に膨らむため、資金繰りが好転するには至らないのが一般的です。
慢性的な人手不足
運送業は、ドライバーや整備員の確保が年々難しくなっており、人手不足が慢性化しています。必要な人材をそろえられない場合、積極的な受注の拡大ができず、機会を逃すことにもつながります。また人手を確保するためには、賃金水準の引き上げや各種手当の充実が不可欠です。
つまり、ドライバーや整備員を確保するためには人件費が上昇し、収益を圧迫します。このような構造が、手元資金が手薄となる要因です。
車両の故障など想定外な出費が発生しやすい
トラックや車両を使う運送業では、事故・故障などの突発的な支出が避けられません。修理費、部品交換、稼働停止による機会損失、賠償費用などが資金繰りを圧迫します。
加えて、法定点検・車検・保険料など固定費用も重くのしかかるため、手元資金が十分でないと資金繰りが一気に悪化します。こうした想定外な出費に備える余裕がない中小事業者は、資金繰りが厳しくなりやすいです。
売掛サイトが長い
運送業では、売上を計上しても実際の入金までに日数がかかる取引が多く、支払サイトが長期化しがちです。
取引先が支払期日を先延ばしにするケースや、手形決済の慣習などがこれを助長します。回収までの間も、燃料・人件費・車両維持費などの支出は先行して発生するため、手元資金が枯渇しやすくなります。
設備投資に資金がかかる
運送業はトラック車両自体が高額資産であり、更新や増設、あるいは冷蔵機能やクレーンなどの架装も含めると、1台あたり数百万〜数千万円必要です。さらに、整備を自社で行う場合は、工具・機器・整備施設の整備費用といった初期投資も発生します。
こうした設備投資は必要不可欠である一方、資金負担は重く、十分な内部留保がなければ資金繰りを圧迫しやすい要因となります。
ファクタリングが運送業の資金繰りに相性がいい理由とは
ファクタリングは、自社の売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで早期に現金化が可能な資金調達方法です。
特に運送業は、支払サイトの長さや燃料費・人件費などの先行支出が多い業種であり、売掛金を早期に現金化できる仕組みと非常に相性が良いといえます。以下では、ファクタリングが運送業に適している理由を詳しく見ていきましょう。
ファクタリングが運送業に適しているポイント
融資に比べ審査が緩い
短期間で資金調達が見込まれる
売掛金が早期に回収できる
未回収リスクが回避できる
融資に比べ審査が緩い
ファクタリングは、融資に比べて審査が緩い点が運送業にとって相性がいいとされています。融資の場合、審査の対象は、利用企業です。利用企業の決算が赤字や債務超過である場合、信用力が劣っていると見なされることが多く、審査に通ることが厳しいです。
一方ファクタリングにも、融資同様審査があります。しかし、審査の対象が売掛先であるため、申込企業の決算状況が芳しくなかったり、税金滞納があったりしても利用できる場合があります。
決算状況が思わしくないため融資が受けられない運送業者であっても、ファクタリングであれば資金の調達が可能です。
短期間で資金調達が見込まれる
短期間で資金調達が可能な点も、ファクタリングは運送業にとって相性のいい資金調達方法です。
融資の場合、書類提出・与信審査・稟議などに時間がかかります。融資における資金調達は、3週間から1ヶ月ほどかかるといわれています。
ファクタリングの場合、審査における項目が少なく、必要書類も融資に比べて少ないため、数日ほどで資金調達が可能です。中には、最短即日で資金調達が可能なところもあります。
燃料費や人件費の支払いが迫る運送業にとって、ファクタリングは即効性の高い資金調達の手段といえるでしょう。
売掛金が早期に回収できる
運送業の売掛サイトは、請求から入金までの期間が60日〜90日と長いのが一般的で、売上計上後の現金化が遅れがちです。その間にも、燃料代や人件費、車両維持費といった支出は先行して発生するため、資金繰りが苦しくなる要因となります。
ファクタリングを利用すれば、早期の現金化が可能となるため、資金繰りが安定します。
資金繰りが安定することで、運転資金の支払いがスムーズとなり、同時に急な出費にも対応可能です。
未回収リスクが回避できる
ファクタリング契約は通常、償還請求権のない契約です。売掛先が債務不履行となった場合、利用企業が責任を負わない仕組みであり、貸倒損失はファクタリング会社が被ることになります。
利用企業においては、ファクタリング会社を利用することで、未回収リスクから回避でき、安心して運送業務に集中することが可能です。
ファクタリング活用前に運送業者が知っておきたい注意点とは
ファクタリングは運送業の資金繰りにおいて相性のいい手段ですが、利用にあたってはいくつか注意すべき点があります。仕組みを十分理解しておかないと、思わぬコストやトラブルにつながるおそれもあります。
以下で代表的な注意点を確認しておきましょう。
運送業におけるファクタリング活用の注意点手数料がかかる
審査次第では利用できない恐れがある
悪質な業者が存在する
過度な利用を避ける
手数料がかかる
ファクタリングは、売掛債権の譲渡によって資金を得る仕組みのため、利用時には手数料が発生します。
一般的に、利用企業とファクタリング会社との契約の2社間ファクタリングの場合、手数料は8%~18%が相場となっています。売掛先を加えた3社間ファクタリングの相場は2〜9%です。
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社が直接売掛先より回収ができないため、未回収リスクが高くなるため、3社間ファクタリングより手数料が高めに設定されています。
審査次第では利用できない恐れがある
ファクタリングは融資に比べ審査が柔軟とはいえ、売掛先の信用力が低い場合は利用できないこともあります。
売掛先の経営状況や支払実績が悪い場合、債権回収のリスクが高いとファクタリング会社から判断されやすくなり、結果として、審査に通らない恐れがあります。
ファクタリングを利用する場合、譲渡する債権は信用力の高い売掛債権の譲渡を心がけましょう。
悪質な業者が存在する
ファクタリング会社には、悪質な業者が存在する点にも注意しなければなりません。
ファクタリング業を営む場合、監督官庁などへの届け出や免許は不要です。そのため、法外な手数料を請求したり、融資に近い違法契約を結ばせたりする悪質な業者も存在します。
ファクタリングを利用する場合、公式サイトや口コミなど、信頼できる会社であるかどうかを確認することが重要です。
過度な利用を避ける
ファクタリングは一時的な資金繰りを改善する有効手段です。しかし、審査が融資より緩いといった理由で頻繁に利用することは避けなければなりません。
過度な利用により、手数料を支払う頻度が高くなり、収益を圧迫するためです。
頻繁に手数料を支払うことで、実質的な利益率が下がり、経営の健全性を損なう恐れがあります。ファクタリングを一時的な資金繰りを改善する手段として位置づけ、根本的な財務体質の改善を並行して進めるようにしましょう。
運送業向けファクタリング会社の選び方
これまで、ファクタリングが運送業と相性の良い理由や、利用時の注意点について解説してきました。
では、実際に資金調達の手段としてファクタリングを導入する際、どのような基準で会社を選べばよいのでしょうか。ここでは、信頼できるファクタリング会社を見極めるための主なチェックポイントを紹介します。
ファクタリング会社を見極めるポイント手数料の上限をチェックする
運送業の取引実績のあるファクタリング会社を選ぶ
現金化日数の短いところを選ぶ
償還請求権の有無をチェックする
手数料の上限をチェックする
ファクタリングを利用する場合、手数料の上限をチェックするようにしましょう。ファクタリングの手数料は、法律で上限が定められていないため、業者ごとに大きく異なります。
前述の通り、2社間ファクタリングの手数料の相場は8%~18%、3社間ファクタリングのそれは2〜9%が一般的です。しかしながら、中には30%を超える高額な手数料を設定する業者も存在します。
契約前に見積書を提示してもらい、手数料率はもちろん、事務手数料や登記費用などの付随費したものを含めた総コストを確認することが大切です。
運送業の取引実績のあるファクタリング会社を選ぶ
運送業は取引構造が特殊であるため、運送業界の商習慣を理解しているファクタリング会社を選ぶことが重要です。
運送業に特化したファクタリング会社であれば、請求サイクルや売掛債権の特徴を把握しており、柔軟でスピーディーな審査が可能です。
公式サイトで運送業の取引実績や事例紹介を明記されているファクタリング会社を選ぶことで、安心した取引が見込めるでしょう。
現金化日数の短いところを選ぶ
現金化までの日数の短いファクタリング会社を選ぶことも運送業にとって重要な要素といえます。運送業界は、燃料費やドライバーの給与など日々の支払いが多く、資金が滞ると経営に直結します。また、事故や故障など、運送業には突発的な出費も発生しやすい業種です。
したがって、現金化までの日数が短いファクタリング会社を選ぶことが運送業においては不可欠です。審査から入金まで最短即日〜2営業日で完了するファクタリング会社もあり、急な支払いにも対応できます。
償還請求権の有無をチェックする
ファクタリング契約は通常償還請求権が付与されていないものが一般的です。しかし中には償還請求権が契約に付与されているファクタリング会社もあるので注意が必要です。
償還請求権が付与されている場合、売掛先が倒産や支払い不能になった場合、利用企業が売掛先に代わってファクタリング会社に入金しなければなりません。
ファクタリング契約を結ぶに際しては、償還請求権が付与されていない契約であるのかを確認して利用するようにしましょう。
まとめ
運送業界は、売掛金の回収までのスパンの長さや経費の先行負担など、資金繰りにおいて不安定になりやすい業種です。
こうした課題に対しファクタリングは、入金までのタイムラグを解消できる有効な手段として注目されています。
ただし、手数料や契約内容によっては、資金調達コストが増える恐れがあるため、注意してファクタリング会社選びを行うことが重要です。
ファクタリング会社を選ぶ際には、運送業での取引実績や現金化までのスピード、償還請求権の有無を確認することで、安心して活用できます。
ファクタリングに対する正しい知識を持って活用すれば、資金繰りの安定と経営基盤の強化につながるでしょう。



