近年、資金調達方法が多様化しています。その中で、事業者の資産を利用して資金調達が可能な方法のひとつが「ファクタリング」です。
事業者が保有する売掛債権を買い取ってもらうことで早期の現金化が可能なファクタリングには、「2社間ファクタリング」「3社間ファクタリング」の2つの取引形態があります。
事業者の都合にあわせて使い分けができ、近年注目されている資金調達方法です。
本記事では、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いについて解説します。
それぞれの仕組みやメリット・デメリットについて紹介しますので、ファクタリングの利用を検討している事業者は最後までお読みください。
ファクタリングとは
ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、支払期日前に資金を受け取る仕組みです。
売掛金を担保に融資を受けるのではなく、債権そのものを売却する点が融資との大きな違いです。運転資金の不足を一時的に補う手段として中小企業や小規模事業者に広く利用されています。
ファクタリングには、2社間ファクタリング、3社間ファクタリングの2種類の取引形態があり、現金化の早さや手数料が異なる点も特徴です。
ここでは、ファクタリングを利用する利点や注意点について解説します。
ファクタリングの利点
ファクタリングの利点として、以下の3点があります。
- 融資より早期の資金調達が可能
- 銀行融資よりも審査がやさしい
- 信用情報に悪影響がない
それぞれ順を追って紹介します。
融資より早期の資金調達が可能
融資では申込みから実行までに決算書を確認したり稟議書を作成したりするなど、多くのプロセスが必要です。資金調達まで数週間〜1ヶ月近くかかることも珍しくありません。
一方ファクタリングの場合、実際に売掛債権が存在しているか、あるいは売掛先の支払能力に問題がないかについて審査します。
チェックする項目が融資より少ないため、ファクタリングは早期の資金調達が可能です。ファクタリング会社によっては、最短即日での現金化が見込まれます。
銀行融資よりも審査がやさしい
ファクタリンの利点として、融資に比べて審査がやさしい点があります。融資は申込事業者の信用情報や財務状況等を審査しますが、ファクタリングは、売掛先の信用力に焦点を当てて審査します。
赤字決算や債務超過、あるいは税金滞納などがある事業者でも、売掛先が安定した企業であれば資金調達が見込まれます。
信用情報に悪影響がない
信用情報に影響を与えない点も、ファクタリングの大きな利点としてあげられます。
ファクタリングは売掛債権の売買であり、借入ではありません。そのため、融資申込みや返済履歴が登録される信用情報機関(CIC・JICCなど)に、利用事実が記録されることはありません。
将来、銀行融資やローンを申込む際も、ファクタリングを利用したことで支障をきたすことがなく、通常どおり審査を受けられる点は中小企業にとって大きな安心材料と言えます。
ファクタリングを利用する際の注意点
ファクタリングを利用する場合、注意しなければいけない点もあります。
注意すべきポイントとして次の3点があります。
- 手数料が発生する
- 売掛債権以上の資金は調達できない
- 悪質な業者が存在する
手数料が発生する
ファクタリングでは、売掛金額面そのままが入金されるわけではなく、手数料を差し引いた金額が支払われます。手数料率は、売掛先の信用力や取引形態(2社間・3社間)、取引額や期間などによって変動します。
手数料が気になる事業者は、複数社に見積もりを取り、総コストと資金繰りへの影響を必ず試算した上で利用することがおすすめです。
売掛債権以上の資金は調達できない
ファクタリングは手持ちの売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい資金化するサービスであるため、調達可能な金額の上限は提示した売掛債権金額です。そのため、設備投資など多額の資金需要には十分対応しきれない点に注意が必要です。
中長期の成長資金や大型投資には融資が適しており、運転資金としてファクタリングを活用するのが一般的と言えます。
悪質な業者が存在する
ファクタリングは、近年幅広い事業者で利用が進む資金調達手段ですが、利用にあたっては注意すべき点もあります。
法外な手数料を請求したり、強引な取立行為を行ったりする悪質業者の存在です。
こうしたトラブルを避けるためには、会社の公式サイトの情報だけでなく、利用者の口コミや評判を十分に確認し、信頼できる事業者を慎重に選ぶことが重要です。
2社間ファクタリングについて
ファクタリングの取引形態である2社間ファクタリングはどのようなものなのかについて、仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングは、売掛先を介さず、利用事業者とファクタリング会社の2社間のみで契約が成立する取引形態です。
2社間ファクタリングの一般的なフローは以下の通りです。
- 売掛金の発生
- 事業者がファクタリング会社に申込みおよび必要書類の提出
- 必要書類をもとにファクタリング会社が審査
- 事業者はファクタリング会社と債権譲渡契約を締結
- ファクタリング会社は売掛債権買取代金を事業者に支払い
- 売掛先から支払われた売掛金を事業者はファクタリング会社へ入金
2社間ファクタリングのメリット
2社間ファクタリングを利用することのメリットとして「最短即日の現金化が可能」「売掛先に知られずに利用できる」点があります。
最短即日の現金化が可能
2社間ファクタリングの特徴として、早期の現金化が見込まれる点があります。また、ファクタリング会社によっては、最短即日での現金化が可能です。
売掛先の承諾を得る必要がないため、給与や仕入代金の支払いなど、タイミングがシビアな資金需要がある場合に重宝されます。
売掛先に知られずに利用できる
2社間ファクタリングは、申込事業者とファクタリング会社との間の契約です。債権譲渡の通知や承諾が売掛先に対して不要であり、売掛先に知られずに利用できます。
取引関係を維持しつつ資金繰り改善を図りたい事業者にとっては有効な資金調達方法と言えます。
2社間ファクタリングのデメリット
一方で、2社間ファクタリングのデメリットとして「手数料が割高となる」「債権譲渡登記が必要となるケースがある」点があるので、これらを解説します。
手数料が割高となる
2社間ファクタリングでは、申込事業者が売掛金を回収し、その後ファクタリング会社に入金しなければなりません。
売掛先がファクタリング会社に直接入金ではないため、ファクタリング会社は未回収リスクを負います。その分、手数料率が高めに設定される傾向があります。
一般に、3社間ファクタリングに比べて割高となり、8%~18%が相場とされています。
債権譲渡登記が必要となるケースがある
2社間ファクタリングの場合、売掛先への連絡の必要がありません。しかし、第三者に対して譲渡の事実を主張する証拠がありません。そのため、第三者に対抗する手段として「債権譲渡登記」を求めるファクタリング会社もあります。
登記を行うと、譲渡の事実が確認できるため、売掛先にファクタリング利用が気づかれるリスクもあります。加えて、登記手続きには時間と費用がかかる点にも注意が必要です。
3社間ファクタリングについて
ファクタリングの取引形態には、2社間ファクタリングとは別に3社間ファクタリングもあります。
以下では3社間ファクタリングの仕組みやメリット・デメリットについて紹介します。
3社間ファクタリングの仕組み
3社間ファクタリングは、事業者・ファクタリング会社・売掛先の3者が関わる取引形態です。売掛先に債権譲渡の通知を行い、売掛先が承諾した上で契約・資金化する仕組みです。
3社間ファクタリングの流れは以下のようになります。
- 売掛金の発生
- 事業者がファクタリング会社に申込みおよび必要書類の提出
- 売掛先に債権譲渡の通知
- 売掛先による譲渡の承諾
- 必要書類をもとにファクタリング会社が審査
- 事業者・ファクタリング会社・売掛先間で債権譲渡契約を締結
- ファクタリング会社は売掛債権買取代金を事業者に支払い
- 売掛先は売掛金をファクタリング会社へ入金
3社間ファクタリングのメリット
3社間ファクタリングのメリットとして、手数料が低くなりやすい点や、売掛金の管理の手間が省けるメリットがあるので、順を追って紹介します。
手数料が低くなりやすい
3社間ファクタリングは、売掛先が支払い期日にファクタリング会社へ直接入金する仕組みのため、ファクタリング会社の未回収リスクが小さくなります。
そのため、通常手数料が低く設定されやすく、2%〜9%が相場とされています。コスト負担を抑えたい事業者に適した選択肢と言えるでしょう。
売掛金の管理の手間が省ける
売掛先がファクタリング会社へ直接入金するのが3社間ファクタリングの特徴であるため、
利用事業者は、売掛金の管理が不要となります。
手間が省けるため、売掛先が多く、入金管理に時間を取られている事業者にとってはメリットと言えそうです。
3社間ファクタリングのデメリット
3社間ファクタリングのデメリットとして、資金化までに日数が必要であったり、売掛先にファクタリングの利用の事実が知られてしまったりする点があります。以下で深掘りします。
資金化までに時間がかかる傾向にある
3社間ファクタリングでは、売掛先への債権譲渡通知が必須で、承諾を得なければなりません。審査や手続きに時間がかかる傾向があると同時に、売掛先において社内での承認が必須なケースもあり、資金化に時間がかかる点がデメリットと言えます。
利用事業者とファクタリング会社の都合だけでは進められないため、その点がネックと言えそうです。
売掛先にファクタリングの利用の事実が知られてしまう
3社間ファクタリングでは、債権譲渡通知を売掛先に送らなければならず、ファクタリングによる資金調達の事実が必ず売掛先に知られます。
売掛先によっては、資金繰りが悪化しているのではと懸念を抱く場合もあります。
取引関係に影響する可能性は否定できないため、信用力を重視する業界では注意が必要です。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの相違点
最後に、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの相違点をまとめます。
主な相違点は以下の3点です。
- 手数料
- 現金化までにかかる時間
- 売掛先に対する通知や承諾の有無
手数料
2社間ファクタリングの場合、譲渡通知や承諾を売掛先に求めないため、売掛債権の未回収リスクが高くなります。手数料は割高になり、8%~18%が相場です。
3社間ファクタリングにおいては、直接ファクタリング会社に売掛先が入金する取引形態であるため、未回収リスクが低く抑えられます。2社間ファクタリングと比較して手数料率が低く、2%〜9%が相場とされています。
現金化までにかかる時間
2社間ファクタリングは、事業者とファクタリング会社の2者のみであるため、承諾や通知が不要なため、手続きがスピーディーです。申込みから最短即日、あるいは数日以内に売掛債権を現金化が可能なケースも多く、急な資金ニーズにも対応できます。
3社間ファクタリングの場合においては、売掛先の承諾が必要です。2社間ファクタリングに比べ時間がかかり、場合によっては数日〜数週間要することもあります。
売掛先に対する通知や承諾の有無
2社間ファクタリングでは、売掛先への通知や承諾は不要で、売掛先を含めず取引が完了します。
3社間ファクタリングの場合、売掛金の譲渡に際して売掛先への通知や承諾が必要です。
売掛先が支払先の変更を承諾してはじめて契約が成立します。
まとめ
ファクタリングは、資金繰り改善に役立つ有効な手段です。ただし、取引形態によっては資金調達のスピードやコストが変化します。
2社間は資金調達の早さ、3社間は手数料の低さが利点であり、反面それぞれに注意点も存在します。売掛先とのこれまでの関係性や資金化までの早さ、自社の資金需要を踏まえた選択が重要です。
自社の規模や資金繰りの状況等を勘案し、2社間ファクタリング会社・3社間ファクタリングを上手に選択することがおすすめです。



