法人を設立すると、事業活動の内容や規模に応じて、さまざまな税金が発生します。
法人税や消費税といった代表的な税金だけでなく、従業員に代わって納める税金や、契約・資産保有のタイミングで都度発生する税金も存在します。これらを正しく理解していないと、想定外の資金流出や申告漏れにつながりかねません。
本記事では、法人にかかる税金の種類について解説します。あわせて、節税の考え方や、期限管理を怠った場合のペナルティについても紹介します。
法人にかかる税金の種類について
法人に対して課せられる税金は主に次の6種類です。
- 法人税
- 法人住民税
- 地方法人税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
- 消費税
それぞれ順を追って解説します。
法人税
法人税は、法人が事業活動によって得た所得に対して国に納める国税です。課税対象となる所得は、会計上の利益を出発点に、交際費・寄附金・役員給与などの税務調整を加えて算定されます。
税率は、資本金1億円以下の中小法人の場合、年800万円以下の所得部分が15%、800万円超の部分が23.2%です。資本金1億円超の法人は、原則として23.2%が適用されます。
法人税は単独で完結する税金ではなく、地方法人税や法人住民税(法人税割)の計算基礎となるため、実効税率に大きく影響します。
法人住民税
法人住民税は、法人が事業所を有する都道府県・市区町村に納める地方税で、「法人税割」と「均等割」から構成されているのが特徴です。
法人税割
法人税割は、法人税割額を基礎に算定されます。法人税割の税率は、標準税率が定められており、都道府県税が1%、市町村民税が6%です。
ただし、地方自治体によっては異なる税率を採用しているケースがあるため、確認する必要があります。
均等割
均等割は、所得の有無にかかわらず発生します。
最低でも年間7万円程度が課税され、資本金や従業員数に応じて増額されます。
赤字法人でも必ず負担が生じるため、法人住民税は「利益連動ではない固定費的税金」として、資金繰り計画に織り込む必要があるかもしれません。
地方法人税
地方法人税は、法人税額を基礎として国に納める国税で、地方税財源の偏在是正を目的に創設されました。
税率は法人税額に対して10.3%です。法人が直接地方自治体に納付する税金ではなく、国が徴収後、地方交付税の原資として配分されます。
法人事業税
法人事業税は、法人が行う事業そのものに対して課される都道府県税です。
所得を基準とする「所得割」が基本です。各都道府県により税率は異なりますが、資本金1億円以下の法人では、所得割の税率は概ね3.5%~7.0%の範囲で設定されています。
一定規模以上の法人には外形標準課税が適用され、所得割に加えて「付加価値割(1.26%)」および「資本割(0.525%)」が課されます。
特別法人事業税
特別法人事業税は、法人事業税の一部を国税として切り出した税金で、法人事業税の計算過程であわせて算出されます。
税率は法人事業税(所得割)に対して37%相当とされており、法人が個別に申告・納付する税目ではありません。
形式上は国税ですが、都道府県が徴収し、地方財源として活用されます。実務上は法人事業税と一体として認識されるため、「法人事業税+特別法人事業税」を合算した負担感で把握することが重要です。
消費税
消費税は、商品やサービスの提供に対して課される間接税です。
税率は10%(標準税率)、飲食料品などには8%(軽減税率)が適用されます。法人は売上時に預かった消費税から、仕入や経費で支払った消費税を差し引いた差額を納付します。
赤字・黒字を問わず納税義務が生じる点が消費税の特徴です。利益管理と資金管理を分けて考える必要があります。インボイス制度の開始により、免税事業者か課税事業者かの判断は、取引関係にも影響を及ぼす重要な経営判断となっています。
従業員に代わって納める税金
法人は、自社の税金を納めるだけでなく、従業員が本来負担すべき税金を預かって納付する義務も負っています。代表的なものが源泉所得税と住民税(特別徴収)です。
源泉所得税
源泉所得税は、従業員や役員に給与・賞与・報酬を支払う際、所得税をあらかじめ差し引いて国に納付する制度です。
法人は源泉徴収義務者として、原則として支払月の翌月10日までに納付しなければなりません。
年末には年末調整を行い、税額の過不足を精算します。納付が遅れた場合は不納付加算税や延滞税が発生するため、金額の大小にかかわらず期限管理が重要です。
住民税(特別徴収)
住民税の特別徴収とは、従業員が負担する住民税を、法人が給与から天引きして市区町村に納付する制度です。
前年の所得を基に税額が決定され、通常は6月から翌年5月までの12か月に分けて徴収します。法人は指定された金額を毎月納付する義務があり、従業員に代わって税務を担う立場となります。源泉所得税と同様、納付遅延は法人の責任となる点に注意が必要です。
その他都度かかる税金
法人には、毎期必ず発生する税金のほかに、特定の取引や資産の取得・保有をきっかけとして発生する税金があります。
これらは「都度かかる税金」とされ、契約書作成や登記、不動産・設備の保有、車両所有など発生頻度が低いため見落とされやすいものの、金額が比較的大きくなる場合もあり、事前の把握が重要です。
印紙税
印紙税は、契約書や領収書などの課税文書を作成した際に課される国税です。
売買契約書、請負契約書、金銭消費貸借契約書などが代表例で、記載金額に応じて税額が定められています。
所定の収入印紙を貼付し、消印することで納税します。なお、電子契約で作成した契約書は印紙税の課税対象外となるため、コスト削減の観点から電子化を進める法人も増えています。
登録免許税
登録免許税は、法人設立時の会社登記や役員変更、本店移転、不動産登記などを行う際に課される国税です。
会社設立時には資本金額に応じて計算され、最低でも一定額の登録免許税が必要となります。登記を伴う手続きが発生するたびに課税されるため、組織変更や不動産取得を行う際は、登録免許税を含めた総コストを事前に見積もることが重要です。
固定資産税
固定資産税は、法人が所有する土地・建物・償却資産に対して課される市区町村税です。
毎年1月1日時点の所有者に課税され、原則として固定資産税評価額に税率1.4%を乗じて算出されます。自治体によっては異なる税率を導入している場合もあるので、事前にそれぞれの自治体の公式サイトで確認しましょう。
建物や土地だけでなく、機械設備や備品などの償却資産も課税対象となります。設備投資後の申告漏れは追徴課税につながるため注意が必要です。
自動車税(軽自動車税)
法人が事業用として車両を保有している場合、自動車税または軽自動車税が課されます。普通自動車は都道府県税、軽自動車は市区町村税として扱われ、排気量や車種に応じて税額が決まります。
会社にかかる税金に対する節税対策
会社の節税対策とは、脱税や無理な税負担回避ではなく、税法で認められた制度を正しく活用し、課税所得をコントロールすることを指します。
以下では、多くの法人で実行可能な代表的な節税策を整理します。
- 役員報酬の見直し
- 福利厚生の充実
- 少額減価償却資産の一括処理
- 赤字を翌年以降に繰り越す
役員報酬の見直し
役員報酬は、法人税と役員個人の所得税・住民税の双方に影響するため、節税効果の大きい項目です。
役員報酬を損金算入するには「定期同額給与」として、事業年度開始から3か月以内に金額を決定する必要があります。法人利益が多い場合、報酬を適正水準まで引き上げることで法人税は軽減されます。
福利厚生の充実
福利厚生費は、要件を満たせば全額損金算入が可能で、節税と従業員満足度向上を同時に実現できる施策です。
健康診断費用や慶弔見舞金、社員旅行などが代表例で、全従業員を対象としていることが重要な判断基準となります。役員のみを対象とした支出や私的性格の強い支出は否認されやすいため注意が必要です。
少額減価償却資産の一括処理
少額減価償却資産の一括処理を利用することも、節税として有効です。
30万円未満の資産について「少額減価償却資産の特例」を利用し、年間300万円を上限に一括損金算入ができます。
本来は複数年で償却する資産を即時費用化できるため、黒字が見込まれる年度の節税策として有効です。ただし、適用期限や対象法人の要件があるため、購入前に確認することが必要です。
赤字を翌年以降に繰り越す
法人が赤字決算となった場合、その欠損金を翌年以降の黒字と相殺できる「欠損金の繰越控除」制度があります。
青色申告法人であれば、法人は原則として10年間の繰越が可能です。将来の法人税負担を抑える制度ですが、期限内申告を行わなければ適用されません。
また、要件を満たせば、「欠損金の繰り戻しによる還付」の適用を受けられます。
前期が黒字で当期が赤字となった場合に、その赤字を前期の所得にさかのぼって充当することで、前期に納付した法人税の還付が可能な制度です。
法人の納税遅延や申告漏れなどにより生じるペナルティ
法人が税金の納付や申告を期限どおりに行わなかった場合、単に本税を支払えば済むわけではなく、延滞税や加算税といったペナルティが課されるので注意が必要です。
また、2期連続で申告期限を過ぎると、青色申告ができなくなる恐れもあるので、期日管理を怠らないようにしましょう。
納税遅延があると延滞税が発生する
法人税や消費税などを法定納期限までに納付しなかった場合、納付が完了するまでの期間に応じて延滞税が課されます。
延滞税は利息のような性格を持ち、原則として納期限の翌日から自動的に発生し、税率は期間により異なり、納期限から一定期間を超えると高く設定されます。
資金繰りの都合で納税が遅れた場合でも免除されることはなく、結果として本来不要なコストを負担することになりかねません。
申告漏れなどにより各種加算税が課される
申告内容に誤りがあった場合や、そもそも申告を行っていなかった場合には、加算税が課されます。
代表的なものは「無申告加算税」「過少申告加算税」「重加算税」がありますす。内容の悪質性に応じて税率が高くなります。
特に重加算税は、意図的な隠蔽などがあったと判断された場合に課され、税負担が大幅に増加します。単なるミスでも指摘を受ける可能性があるため、正確な申告が必要です。
2期連続で申告期限を過ぎた場合青色申告ができなくなる
青色申告は、欠損金の繰越控除や各種税制優遇を受けられる重要な制度です。
しかし、2期連続で申告期限を過ぎた場合には、その承認が取り消される恐れがあります。青色申告ができなくなると、赤字の繰越が認められなくなるなど、将来の税負担が大きくなります。
納税額が発生しない赤字決算であっても、期限内申告を行うようにしましょう。
まとめ
法人にかかる税金は多岐にわたり、国税・地方税に加え、従業員に代わって納める税金や、特定の行為に応じて発生する税金まで含めて把握する必要があります。
さらに、役員報酬や設備投資の扱いによって税負担を調整できる一方、納税遅延や申告漏れがあれば延滞税や加算税といったペナルティが発生します。
重要なのは、税金を「決算時だけの問題」とせず、日常の管理を怠らないことです。
法人にかかる税金を正しく理解するとともに、適切な節税を心がけ、不要なペナルティを課せられないように注意しましょう。



