資金繰りは、多くの事業者にとって常に向き合わなければならない重要な経営課題の一つです。たとえ売上が順調に計上されていても、入金までの期間が長引いたり、取引先からの支払いが遅れたりすると、手元資金が不足するケースは少なくありません。こうした状態が続けば、帳簿上は黒字であっても、資金ショートに陥るリスクが高まります。
近年、その対策として注目されている資金調達手段が、売掛債権を買い取ってもらうことで早期に現金化できるファクタリングです。状況に応じて適切に活用すれば、資金繰りの悪化や突発的な資金不足を未然に防ぐことが可能となります。
本記事では、ファクタリングを利用すべき具体的なタイミングについて解説します。あわせて、利用するメリットや押さえておきたい注意点についても紹介するので、資金調達についてお悩みの経営者は参考にしてください。
資金繰りが厳しくなる原因
資金繰りが厳しくなる背景には、売上の多寡だけでは判断できない要因が潜んでいます。 ここでは、企業が資金繰りに厳しくなる原因について解説します。 主な原因は、以下の3点です。
- 入金までのスパンが長い
- 売上減少や取引先の支払い遅延
- 過剰在庫および滞留在庫の増加
入金までのスパンが長い
企業間取引では、請求から入金までに30日~60日程度の売掛サイトが設定されることが一般的です。 この期間が長くなるほど、売上は計上されていても手元資金が増えず、資金繰りに負担がかかります。 特に外注費や人件費、家賃などの固定費は先に支払いが発生するため、入金前に資金が枯渇するリスクが高まります。 売上規模が拡大している局面ほど、入金待ちの売掛金が増え、黒字倒産の要因となる点には注意が必要です。
売上減少や取引先の支払い遅延
売上の減少は、入金額そのものを減少させるため、資金繰りに直結します。加えて、取引先の経営悪化などにより支払いが遅延すると、予定していた資金が確保できず、資金計画に大きな狂いが生じます。特に特定の取引先への依存度が高い場合、その影響は深刻です。
支払い遅延が常態化すると、自社の支払いにも遅れが生じ、信用低下を招くおそれがあります。
過剰在庫および滞留在庫の増加
過剰在庫や滞留在庫は、資金が商品として固定化される状態を生み出します。仕入れ時点で現金は支出されている一方、販売されなければ入金は発生しないため、資金繰りを圧迫します。 特に需要予測のズレや販売不振により在庫が長期間動かない場合、保管コストや廃棄リスクも増大します。
在庫は資産である反面、現金化できなければ負担となります。定期的な在庫管理と、適正在庫の維持が資金繰り改善には不可欠です。
ファクタリングを利用するタイミングはこの5つ
経営者は資金不足を察知すれば、早速資金調達しなければなりません。中でも、ファクタリングを利用する場合、どのようなタイミングで行うのがいいのでしょうか。
以下では、ファクタリングによる資金調達を検討するタイミングについて紹介します。
- 急な出費が必要になった時
- 融資の見込みがない時
- 外注先から先払いを頼まれた時
- 開業後間もない時
- 負債の増加を避けたい時
急な出費が必要になった時
設備の故障や突発的な修繕など、事業を営む中では想定外の出費が生じることは決して珍しくありません。 このような場面では、金融機関からの融資を検討しても、審査から実行までに3週間から1か月程度を要することが多く、緊急の資金需要には対応しきれないケースがあります。
その点、ファクタリングは既存の売掛債権を活用して現金化する仕組みであるため、比較的短期間で資金を確保できるのが特徴です。 急を要する支払いが発生した場合において、ファクタリングは資金繰りを下支えする有効な調達手段として活用されています。
融資の見込みがない時
赤字決算や税金の滞納などを理由に、金融機関の融資審査に通らないケースは決して少なくありません。融資では、申込企業そのものの信用力や財務状況が重視されるため、業績が悪化している局面では資金調達のハードルが高くなります。
一方、ファクタリングは売掛先の信用力を基準に審査が行われるため、自社の業績が芳しくなくても利用できる可能性があります。資金調達の選択肢が限られている状況において、ファクタリングは現実的かつ有効な資金確保手段として検討されやすい方法といえるでしょう。
外注先から先払いを頼まれた時
業務委託や外注取引では、外注先から着手金や先払いを求められることがあります。 しかし、元請けからの入金が後になる場合、手元資金だけで対応すると資金繰りが逼迫する恐れがあります。
このような場面でファクタリングを利用すれば、売掛金を早期に現金化し、外注費の支払いに充てることが可能です。 取引関係を維持しつつ、自社の資金繰り悪化を防ぐ手段として活用されるケースもあります。
開業後間もない時
開業直後は事業実績や信用情報が十分でなく、金融機関からの融資を受けにくい時期にあたります。その一方で、売上が発生していても入金までに時間を要することが多く、資金不足に陥りやすいのが実情です。
こうした状況において、ファクタリングは創業年数が浅い事業者でも利用できます。 開業初期の資金繰りを支える手段として注目されています。運転資金を確保し、事業が軌道に乗るまでのつなぎ資金として活用されるケースが多いといえるでしょう。
負債の増加を避けたい時
融資を受ける場合、借入金として負債が増加するため、自己資本比率の低下や将来の融資審査への影響を懸念する事業者も少なくありません。
その点、ファクタリングは借入ではなく売掛債権の売却に該当するため、原則として負債を増やすことなく資金調達が可能です。決算書上の借入金を抑えたい場合や、財務の健全性を維持し、将来的に金融機関からの融資を受けやすい決算内容を整えたい場合には、有効な選択肢の一つといえるでしょう。
ファクタリングを利用するメリット
ファクタリングを利用するタイミングについて解説しましたが、事業者がファクタリングを利用するメリットとしてどのような点があるのでしょうか。 ここでは、事業者がファクタリングを利用するメリットを5点紹介します。
- 現金化までの時間が早い
- 融資に比べて審査が通過しやすい
- 未回収リスクを回避できる
- 自社の安全性を損なわない
- 信用情報に影響しない
現金化までの時間が早い
ファクタリングを利用するメリットの一つが、資金調達までのスピードです。 金融機関の融資では、申込みから実行までに通常3週間から1か月程度を要し、案件の内容によっては数か月かかることもあります。そのため、急な資金需要には対応しにくい側面があります。
一方、ファクタリングは売掛金を譲渡して現金化する仕組みであるため、最短即日から数日で資金を確保できる場合があります。資金繰りが急激に厳しくなった局面や、支払期限が迫っている場面において、迅速に資金を調達できる点は大きな強みといえるでしょう。
融資に比べて審査が通過しやすい
融資においては、審査の対象は申込企業です。ファクタリングは、融資とは異なり、自社の財務状況よりも売掛先の信用力が重視されます。そのため、赤字決算や創業間もない企業であっても、売掛金があれば利用できる可能性があります。
金融機関の融資審査ではハードルが高い企業であっても、ファクタリングであれば資金調達が可能となる点はメリットといえるでしょう。
未回収リスクを回避できる
ファクタリングは、契約形態によって売掛金の未回収リスクをファクタリング会社へ移転できる点も大きな特徴です。
特に償還請求権のない契約、いわゆるノンリコース契約の場合、売掛先が倒産するなどして売掛債権が回収不能となっても、原則として利用企業がファクタリング会社へ代金を支払う義務は生じません。
貸倒リスクを軽減できるため、資金繰りの安定化につながります。
自社の安全性を損なわない
融資では担保や保証人を求められるケースがありますが、ファクタリングはそもそも融資でないため、担保や保証は不要です。
そのため、経営者個人の資産や信用を差し出す必要がなく、自社の経営リスクを過度に高めずに資金調達が可能です。
事業継続性や経営の自由度を保ちながら、必要な資金を確保できる点は、安心材料の一つといえるでしょう。
信用情報に影響しない
ファクタリングは借入ではないため、信用情報機関への登録対象ではない点もファクタリングのメリットです。
そのため、将来的に金融機関から融資を受ける際にも、信用情報への影響を心配する必要はありません。
短期的な資金繰り対策としてファクタリングを利用しつつ、中長期的には融資を検討するといった使い分けも可能です。信用力を維持したまま資金調達できる点は、計画的な経営を行ううえで重要なメリットといえます。
ファクタリングを利用する際の注意点
売掛債権を保有している企業であれば、ファクタリングは手軽に資金調達に利用できます。しかし、利用にあたっては注意すべき点がいくつかあります。 以下では、ファクタリングを利用する際の注意すべき点を4点あげていますので、利用時には注意してください。
- 審査に通らないケースも存在する
- 悪質な業者が存在する
- 債権譲渡登記が必要な場合がある
- 取引先からの印象が悪くなる恐れがある
審査に通らないケースも存在する
ファクタリングは、融資に比べて利用しやすい資金調達手段とされていますが、審査が行われる以上、必ずしもすべての申込みが通過するわけではありません。その点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
特に、売掛先の信用力が著しく低い場合や、売掛サイトが長期にわたる売掛債権については、審査が厳しくなる傾向になります。 ファクタリングを上手に利用するためには、信用度の高い売掛先に対する債権や、できる限り回収までの期間が短い売掛債権を対象とすることを意識するとよいでしょう。
悪質な業者が存在する
ファクタリング業界には、残念ながら悪質な業者が存在するのも事実です。 法外な手数料を請求したり、実質的に貸付と変わらない契約を結ばせたりするケースもあるので注意しましょう。
ファクタリングを利用する前に、複数のファクタリング会社に相見積もりを取り寄せたり、評判や口コミなどを事前にリサーチしたりして、売掛債権を買い取ってもらう業者を決めることをおすすめします
債権譲渡登記が必要になる場合がある
ファクタリング会社によっては、債権譲渡登記を求められる場合があります。 債権譲渡登記は、第三者に対して債権を譲渡されていることを証明するための登記です。
登記費用や司法書士報酬が発生する点には注意が必要です。 登記を行うことで、第三者にもファクタリングを利用していることが知られる恐れがあります。
第三者にファクタリングの利用を知られたくない場合、債権譲渡登記の有無について、事前に確認しておくことが必要です。
取引先からの印象が悪くなる恐れがある
ファクタリングのうち3社間ファクタリングでは、売掛先に対して債権譲渡の通知が行われるケースがあります。その場合、取引先にファクタリングの利用が知られ、資金繰りが厳しいという印象を与えてしまい、信用関係に影響を及ぼす可能性は否定できません。
とりわけ、継続的・長期的な取引関係を重視する事業者にとっては、慎重な判断が求められます。 取引先に知られずに利用できる2社間ファクタリングを選択するなど、自社の資金状況や取引関係を踏まえた契約形態を検討することが重要です。
まとめ
資金繰りが悪化する背景には、入金サイトの長期化や売上の減少、過剰在庫や滞留在庫の増加など、日常の事業活動の中に潜む複合的な要因があります。これらは、一つひとつは小さな問題であっても、重なることで手元資金を圧迫し、黒字であっても資金不足に陥る原因となります。
こうした状況への対策として、ファクタリングの利用があります。 ファクタリングは売掛債権を活用し、スピーディーに資金を確保でき、負債を増やさずに資金調達ができる点がメリットです。
一方で、売掛先の信用状況によっては審査に通らない場合があったり、悪質業者がいたりするなど注意すべき点もあります。
重要なのは、ファクタリングの仕組みや特徴を正しく理解することです。 自社の資金状況や取引先との関係性を踏まえたうえで適切に活用すれば、資金繰りの安定が期待でき、結果として持続的で安定した事業運営につなげられるでしょう。



