資金繰りが厳しい局面では、入金と支払いのズレが経営を圧迫します。 事業者は、入出金のギャップの埋め合わせる策を講じなければなりません。
この、資金繰りの改善に利用されているものに、請求書カード払いサービスがあります。 請求書カード払いサービスは、請求書の銀行振込をクレジットカード決済に置き換え、支払いタイミングを後ろ倒しできるサービスです。
本記事では、その請求書カード払いサービスについて解説します。仕組みやメリット・デメリットについて紹介し、あわせて、資金繰りの改善方法として注目されているファクタリングについても紹介します。 両社の比較も行いますので、資金繰りに悩んでいる事業者はぜひ最後までお読みください。
請求書カード払いサービスとは?
企業の資金繰りといえば、従来は運転資金を金融機関で資金を早期に調達して資金繰りを安定させるのが一般的でした。 しかし、近年では、金融機関融資だけではありません。 支払い期日を後ろ倒しにより、手持現金を確保する方法が脚光を浴びています。それが、請求書カード払いサービスです。
以下では、請求書カード払いサービスの仕組みを解説し、請求書カード払いサービスがおすすめの業種についてもあわせて紹介します。
請求書カード払いサービスの仕組み
請求書カード払いは、本来銀行振込で支払う請求書を、利用者のクレジットカード決済に置き換えるサービスです。
利用者がサービスへ請求書情報を登録しカード決済すると、サービス提供会社が取引先へ期日どおりに振込を実行します。利用者の実際の支払いはカード引落日になるため、資金流出を後ろ倒しできます。
具体的な流れは、下記の通りです。
- 情報の登録
利用者は請求書カード払い会社に、請求書の情報について登録し、クレジットカードでの支払いを申請します。
- 決済
申請に基づき、請求書カード払い会社は利用者のクレジットカードで請求金額にサービス手数料を加えて、サービス事業者宛に決済します。
- 銀行振込
請求書カード払い会社は、利用者の名義で、取引先の指定口座へ請求金額を銀行振込します。
- 決済
利用者は、クレジットカード引落し日に、請求金額にサービス手数料を加えた金額が回収されます。
請求書カード払いの利用がおすすめの業種
請求書カード払いの利用が適する業種は、売上入金より先に外注費・仕入・経費の支払いが発生しやすく、入出金のズレによる資金繰りが厳しい業種です。
具体的には、建設業・広告代理店・ITなど、支払いが先行しやすい業種がおすすめです。
請求書カード払いサービスを利用することで、支払いを先延ばしできます。それにより、手持現金が確保できることで、資金ショートからの回避が可能となります。
請求書カード払いサービスのメリット
仕入債務等により支払わなければならない請求書を、クレジットカードで支払うサービスを利用することで得られるメリットは、以下の3点です。
- 支払い期日が延長できる
- 1つのクレジットカードで支払いがまとめられる
- クレジットカードのポイントやマイルが貯まる
それぞれ順を追って解説します。
支払い期日が延長できる
請求書カード払いサービスのメリットは、請求書の支払いをカード引落日まで遅らせられる点です。
取引先にはサービス提供会社が期日どおりに振込むため、取引先の受取条件は変えずに、利用者側だけ資金流出を後ろ倒しできます。
多くの請求書カード払いサービスは、最大60日程度の先延ばしができ、手持資金にゆとりを生み出せます。
1つのクレジットカードで支払いがまとめられる
請求書カード払いサービスは、1つのクレジットカード決済に集約できます。そのため、支払い管理を一元化しやすくなる点もメリットです。
支払いが分散していると、口座残高の見込み違いや振込漏れなどのミスが起こりやすくなります。
請求書カード払いサービスで支払いをまとめると、締め日・引落日に応じて資金繰りを組み立てやすくなります。
資金繰りの側面から、請求書カード払いサービス利用は有効な管理方法といえるでしょう。
クレジットカードのポイントやマイルが貯まる
請求書カード払いは「カード決済」になるため、カードのポイントやマイルを獲得できる点も特長です。
手数料は発生しますが、ポイント還元分で実質負担が目減りする可能性があります。
特に、日常的に高額の外注費・仕入れを支払う業態では、還元の積み上げが無視できません。貯まったポイントを必要な消耗品や備品の購入に充当することで、経費の削減に活用できます。
請求書カード払いサービスのデメリット
一方で、請求書カード払いサービスを利用するに際してのデメリットについても触れておきます。以下の3点がデメリットとして考えられますので押さえておきましょう。
- 利用限度額が決まっている
- 先延ばし期間に制限がある
- 個人事業主対象外の可能性がある
利用限度額が決まっている
通常、クレジットカードには限度額が設けられています。その限度額を超えて請求書カード払いサービスを利用できない点には注意しなければなりません。
複数の支払いをまとめるほど、限度額を圧迫し、結果として他の決済に影響するといったリスクもあるため、限度枠や利用可能額の事前確認が重要です。
特に、高額な利用が見込まれる場合は、クレジットカード会社へ限度額の引き上げの相談や、複数のカードの利用を検討する必要もあるかもしれません。
先延ばし期間に制限がある
クレジットカードでの支払いであるので、先延ばし期間に制限がある点にも注意が必要です。
多くの請求書カード払いサービスは最大60日程度が一般的とされています。しかし、これはあくまで最大であるため、カードサイクル次第では短くなることもあります。
短期の資金繰り調整には有効でも、慢性的な赤字構造の穴埋めに使うと、翌月以降の支払い負担が重くなりやすい点に気をつけましょう。
個人事業主対象外の可能性がある
請求書カード払いサービスによっては、個人事業主は対象から外れている場合があるので注意しなければなりません。具体的には、個人事業主が発行した請求書は対象外であるサービス会社もある場合です。
請求書カード払いサービスを利用する場合、誰が発行した請求書類か、申込主体は法人か個人かを必ず確認することが必要です。
ファクタリングとは?
資金繰りの改善手段の一つで、請求書カード払い同様に注目されているものが、ファクタリングです。
請求書カード払いは、買掛債務の支払いの先延ばしですが、ファクタリングは売掛債権の早期の現金化です。どちらも、資金繰りを安定させる点では共通しています。
以下では、ファクタリングのしくみや、メリット・デメリットについて紹介します。
ファクタリングのしくみ
ファクタリングは、保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却し、入金期日前に現金化する資金調達方法です。
ファクタリングには、2つの手法があります。一つは、利用者とファクタリング会社との間での契約である「2社間ファクタリング」、もう一つは、売掛先も含めた「3社間ファクタリング」です。
現金化する流れは、通常以下の流れで行われます。
- 申込み
申込みは、ファクタリング会社によって異なりますが、Webやメール、電話および郵送などが多いです。利用者は、自社に合った方法で申込みをします。
- 必要書類の提出
申込みをすると、ファクタリング会社より指定のあった必要書類の提出を行います。
- 審査
必要書類の提示を受けたファクタリング会社は、それらをもとに審査します。
- 見積書の提示・契約
審査後、ファクタリング会社は見積書を利用者に提示します。利用者は、提示された見積書に問題がなければ契約に至ります。
- 入金
契約を結ぶと、ファクタリング会社は利用者が指定した口座に買取金額から手数料を差し引いた金額を入金します。
ファクタリングのメリット
売掛債権を買い取ってもらうことで、スムーズな資金繰りが期待できるファクタリングには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
- 早期の現金化が可能
銀行融資の場合、審査等で3週間から1ヶ月近くかかるとされています。ファクタリングの場合、審査にかかる日数は1週間前後で、中には即日に現金化が可能なところもあります。急な出費にもファクタリングでは対応可能です。
- 借入ではない
ファクタリングは借入ではないので、貸借対照表の「負債」を増やすことがなく資金調達が可能です。会社の安全性を示す「自己資本比率」を下げることがないため、会社の信用度を落とすことなく資金調達ができます。
- 審査が緩い
ファクタリングの審査は、主に売掛先の信用状況や経営状況を審査します。銀行融資のように、審査のメインは申込者ではないため、赤字や債務超過といった芳しくない状況であっても、審査に影響することはほとんどなく資金調達が見込まれます。
ファクタリングのデメリット
一方で、ファクタリングのデメリットとして、次の点があります。
- 手数料がかかる
ファクタリングを利用する場合、請求者カードサービス同様、手数料が必要です。申込者とファクタリング会社との間の「2社間ファクタリング」では8~18%、売掛先を加えた「3社間ファクタリング」では2~9%が相場とされています。
- 債権譲渡登記が必要な場合がある
ファクタリング会社の中には、売掛債権を譲渡したことを第三者に示すため、「債権譲渡登記」を必要とするファクタリング会社もあります。債権譲渡が売掛先に知られたり、登記費用が必要であったりするので、注意が必要です。
- 3社間ファクタリングでは売掛先に知られる
3社間ファクタリングを利用する場合、売掛先に承諾を得なければなりません。売掛先によっては、資金繰りが厳しいのではといった印象を受け、取引の見直しなどを検討する取引先もあるかもしれません。
請求書カード払いサービスとファクタリングの比較
請求書カード払いとファクタリングは、支出を後倒しにするのか、入金を前倒しにするのかの違いはありますが、双方とも企業の資金繰りの改善手法には変わりはありません。
以下では、請求書カード払いとファクタリングとの比較を、次の4つの観点から違いをみていきます。
- 資金繰りの改善方法
- 審査の有無
- 利用可能額
- 手数料
資金繰りの改善方法
請求書カード払いは「支出の先延ばし」によって手元資金を確保する方法であり、ファクタリングは「入金の前倒し」によって資金を調達する方法です。
前者はキャッシュアウトのタイミングを調整する手段、後者は売掛債権を早期に資金化する手段という位置づけです。
売掛金が多い業態ではファクタリングが有効になりやすく、外注費や人件費など支払いが先行する局面では請求書カード払いが適しているといえるでしょう。
審査の有無
請求書カード払いは、クレジットカードを保有していれば、追加の審査や煩雑な書類提出が比較的少ない点が特徴です。
一方、ファクタリングは債権譲渡を伴うため、審査や必要書類の提出が基本的に発生します。取引内容や契約形態によっては、債権譲渡登記を求めるファクタリング会社もあります。
手続きの手間をできるだけ抑え、スピード重視で資金繰りを調整したい事業者にとっては、請求書カード払いの方が取り入れやすいでしょう。
利用可能額
請求書カード払いの利用可能額は、原則としてクレジットカードの利用限度額が上限です。そのため、限度額を超える請求書については、サービスを利用できないケースが生じます。
これに対しファクタリングは、売掛債権額を基準に利用可能額が決まります。ファクタリング会社によっては、高額債権にも対応可能なところも存在します。
したがって、高額の債権・債務を日常的に扱う事業者や、必要資金がカード枠を超えやすい事業者では、ファクタリングの方が適している場面が多いといえそうです。
手数料
手数料は、請求書カード払いが3〜5%程度、ファクタリングは2%〜18%程度が相場とされています。総コストでみると、一般には請求書カード払いの方が抑えられやすい傾向にあります。
ただしファクタリングは契約形態(2社間・3社間)や債権内容によって手数料率が変動しやすく、見積もりの取り方次第で負担感が大きく変わる点に注意が必要です。
まとめ
請求書カード払いサービスは、請求書の支払いをカード決済に置き換え、取引先への支払いは期日どおり維持しながら、自社の支払いをカード引落日に後ろ倒しできる手段です。
支払い期日の延長に加え、複数の振込をカード明細に集約できるため管理が楽になる利点があります。 また、ポイントやマイルが貯まる点もメリットです。
一方で、利用可能額は原則カード枠に制約され、先延ばし期間は締め日次第で変動します。サービスによっては個人事業主が利用できない場合もあるため、対象条件の確認は必須です。
資金繰りの改善手段として売掛債権を売却して入金を前倒しできるファクタリングがあります。調達規模やスピードに強みがある反面、手数料の幅や手続き負担が生じやすい点に注意が必要です。
自社の資金繰りの問題点が「支出の集中」なのか「入金の遅さ」なのかを見極め、審査や利用可能額および手数料を比較して、最適な方法を選びましょう。



