診療報酬ファクタリングは、診療報酬の入金を待たずに資金化できる方法として、医療機関の資金繰りのひとつとして注目されています。

レセプト請求から実際の入金まで一定の時間がかかるため、医療機関はその間の運転資金に悩むケースも少なくありません。そこで活用されるのが、診療報酬債権を譲渡して早期に現金を受け取る診療報酬ファクタリングです。

本記事では、診療報酬ファクタリングとは何かについて解説します。 仕組みやメリット・デメリット、および利用する際に押さえておきたい点について紹介しますので、利用の際の参考にしてください。

診療報酬ファクタリングについて

医療機関が売上として計上する診療報酬を譲渡することで、早期に現金化ができる資金調達方法、それが診療報酬ファクタリングです。 同じく、診療報酬を利用した資金調達方法として診療報酬担保ローンがありますが、その違いや、診療報酬ファクタリングの仕組みについて以下では解説します。

診療報酬ファクタリングとは?

診療報酬ファクタリングとは、医療機関が国民健康保険団体連合会(国保連)や、社会保険診療報酬支払基金(社保)に対して有する診療報酬債権を、ファクタリング会社へ譲渡し入金日前に現金化する方法です。

通常、医療機関等がレセプト(診療報酬明細書)を請求し、実際に国保連や社保から診療報酬が支払われるまでには約2ヶ月の期間がかかります。 このファクタリングサービスを利用することで、入金までのタイムラグが大幅に短縮できます。

診療報酬ファクタリングと診療報酬担保ローンとの違い

診療報酬を使った資金調達方法として診療報酬担保ローンがあります。 両者の違いは、ローンであるかどうかです。

ファクタリングは法律上の定義は「債権の売買」であるため、融資ではありません。 診療報酬債権を売買(譲渡)することで資金調達が可能なしくみです。 そのため、会社の貸借対照表上において、負債を増やすことなく資金調達ができます。

一方、診療報酬担保ローンは、診療報酬債権を担保に借り入れる「融資」です。そのため、貸借対照表上の負債が増えることになります。

双方ともに、診療報酬を利用しますが、法律面・財務面で取り扱いが異なる資金調達方法です。

診療報酬ファクタリングを利用する際の流れ

診療報酬ファクタリングは、通常以下の流れで進んでいきます。 診療報酬ファクタリングは、後述する3社間ファクタリングが一般的なので、ここでは3社間ファクタリングの流れを示します。

  1. 利用者は診療報酬を国保連・社保にレセプト提出
  2. ファクタリング会社に診療報酬債権の買い取りを依頼
  3. ファクタリング会社による審査後、国保連・社保に診療報酬債権売却の承諾を得て、3社間ファクタリング契約が成立
  4. 利用者はファクタリング会社から手数料を差し引いた買取代金を受取
  5. 国保連・社保はファクタリング会社へ請求を行った診療報酬を支払う

2つのファクタリングの手法

ファクタリングには2つの手法があるので、ここで解説します

  • 2社間ファクタリング

    2社間ファクタリングとは、利用者とファクタリング会社との間での契約です。売掛先を介さずに契約するのが特徴です。
    利用者は売掛先から入金があれば遅滞なくファクタリング会社に支払わなければなりません。現金化が早いメリットがありますが、ファクタリング会社にとって未回収リスクが高いため、手数料が高くなる傾向にあります。8%~18%が2社間ファクタリングの手数料の相場とされています。

  • 3社間ファクタリング

    3社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社、売掛先との間で契約を結ぶ手法です。売掛先が直接ファクタリング会社に入金する点が3社間ファクタリング会社の特徴です。ファクタリング会社にとって、未回収リスクが軽減されるため、手数料が低めに設定されているのが一般的で、2%~9%が相場とされています。
    3社間ファクタリングは売掛先の承諾を要するため、契約手続きに手間がかかります。その結果、2社間ファクタリングに比べて、現金化までに時間を要しやすい点には注意が必要です。

診療報酬ファクタリングを利用するメリット

診療報酬ファクタリングを利用するメリットとして、以下の点があります。

審査に通りやすい

診療報酬ファクタリングは、一般の融資より審査に通りやすいとされています。なぜなら、ファクタリングでは、売掛先の信用力を重視するためです。

銀行融資では、医療機関の信用力を審査し、経営状況が思わしくない場合は資金調達が厳しい場合があります。 一方診療報酬ファクタリングでは、国保連や社保が支払先となるため、回収不能リスクが低いと判断され、審査の通りやすさにつながっています。

手数料を比較的低く抑えられやすい

診療報酬ファクタリングは、一般の売掛債権ファクタリングより手数料を抑えやすい傾向があります。 ファクタリング会社が手数料を決める場合、売掛先の信用力を鑑みて決定するのが一般的だからです。

診療報酬債権は、支払元が国保連や社保であるので、貸し倒れリスクが低いと見られます。 そのため、ファクタリング会社は高いリスクを上乗せしにくく、低目に抑えられやすい傾向にあります。

赤字決算や税金滞納時でも利用できる

診療報酬ファクタリングは、利用者が赤字決算や税金滞納があっても利用できる点もメリットとしてあります。なぜなら、ファクタリング会社は、回収先である売掛先の経営状況を審査するためです。

診療報酬ファクタリングは、医療機関が赤字決算であったり税金滞納していたりしていても、売掛先である国保連や社保の未回収リスクが低いと考えられています。 そのため、医療機関の経営状況が芳しくなくても利用できる可能性が高くなります。

担保・保証人が原則必要ない

診療報酬ファクタリングの利点として、担保や保証人が原則不要な点があります。 理由は、ファクタリングが借入ではないからです。

借入の場合、医療機関の信用力によっては、未回収リスクに備えて金融機関は担保や保証人を必要とする場合があるかもしれません。

一方、ファクタリング契約の場合、償還請求権なし(ノンリコース)が基本です。そのため万が一売掛先が債務不履行に陥ったとしても、ファクタリング会社が損失を被り、医療機関は代わって支払う義務がないため、担保や保証人が必要ないのです。

診療報酬ファクタリングを利用するデメリット

一方で、診療報酬ファクタリングにはデメリットもあるので、それぞれ紹介していきます。

取り扱い会社が少ない

診療報酬ファクタリングのデメリットとして、取り扱い会社が少ない点があります。 理由として、診療報酬などに関する専門知識が必要だからです。

一般のファクタリングと異なり、診療報酬ファクタリングは、診療報酬の流れやレセプト実務を理解していることが必須といえます。 そのため、診療報酬ファクタリングを取り扱う会社が少ないといえます。

2社間ファクタリングに比較して時間がかかる

診療報酬ファクタリングは、2社間ファクタリングに比べ、現金化に時間がかかる傾向があります。

診療報酬ファクタリングは、3社間ファクタリングが主な取引手法で、売掛先である国保連や社保の承諾が必要だからです。

2社間ファクタリングの場合、利用者とファクタリング会社だけで契約を進められます。 したがって、診療報酬ファクタリング会社は、2社間ファクタリングより現金化にかかるスピードが落ちる可能性を見込んでおく必要があります。

国保連や支払基金への債権譲渡通知が必要である

診療報酬ファクタリングを利用する際には、国保連・社保に債権を譲渡したことを知らせる「債権譲渡通知」が必要です。診療報酬ファクタリングの場合、3社間ファクタリングを利用することが多いためです。

3社間ファクタリングを利用する場合、売掛先にファクタリングを行う旨を売掛先に伝えて、承諾を得なければなりません。

もちろん、2社間ファクタリングで資金調達を考える場合、国保連・社保への通知は費用ですが、手数料が高くなる点に注意する必要があるでしょう。

慢性的な利用となる恐れがある

診療報酬ファクタリングは、慢性的な利用に陥る恐れがあるので注意しなければなりません。一度利用すると、安易に資金調達ができるため中止するのが難しくなるためです。

診療報酬を前借りする形になるため、翌月以降の本来の入金がなくなったり減少したりします。利用を停止しようとすると、1〜2ヶ月分の診療報酬が入ってこない期間が発生するため、空白期間の運転資金を自前で用意しなければなり、資金ショートのリスクが生じます。

あくまでも常時利用するのではなく、つなぎ資金として考えるのが重要です。

診療報酬ファクタリングを利用する上での押さえておきたいポイント

診療報酬ファクタリングを利用する場合、どのような点に注意して利用すればいいのかについて解説します。

押さえておきたいポイントとして、以下の4点があります。

  • 手数料の低さ
  • 信頼できるファクタリング会社であるかかどうか
  • 入金までのスピードが早いかどうかで選ぶ
  • 「掛け目(留保金)」の仕組み

手数料の低さ

診療報酬ファクタリングを選ぶ際は、まず手数料の低さを確認することが重要です。

たとえば、手数料率がわずかに違うだけでも、毎月利用すれば年間では大きな差になります。しかも、表面上の手数料が低く見えても、別途事務手数料や契約関連費用がかかる場合があります。

そのため、単に料率だけで比較するのではなく、最終的に手元にいくら残るのかまでチェックしておく必要があるといえるでしょう。

信頼できるファクタリング会社であるかかどうか

手数料だけでなく、診療報酬を取り扱っているファクタリング会社が信頼できるかも、利用するにあたって見極めるべきポイントです。

ファクタリングを装った闇金業者や、契約直前に法外な手数料を要求する悪質な業者が存在するためです。 たとえば、契約内容の説明が不十分だったり、費用体系が不透明だったりする会社は避けたほうが無難といえます。

そのためには、ファクタリング会社の実績や契約条件の明確さ、対応の丁寧さを確認することが重要です。

入金までのスピードが早いかどうかで選ぶ

診療報酬ファクタリングを利用する場合、手数料だけでなく入金スピードも押さえておきたいポイントです。

診療報酬ファクタリングは各社とも手数料が比較的低水準に設定されていることが多く、条件の差が見えにくい場合もあります。そのため、比較の際には「いつ資金化できるか」という視点がいっそう重要になります。 自社の資金繰りの状況も考慮しながら、手数料と入金時期の両面から検討するとよいでしょう。

「掛け目(留保金)」の仕組み

診療報酬ファクタリングでは、請求額の全額がそのまま最初に入金されるとは限りません。たとえば、債権額の80~90%程度が先に支払われ、残りは留保金として後日精算されることがあります。これは、返戻や減額などに備えるためのファクタリング会社の保全です。

つまり、掛け目は単なる差し引きではなく、最終確定まで一部を保留する仕組みであります。 利用前には、何%が先払いされるのか、残額はいつどう精算されるのかを確認しておくことが大事です。

まとめ

診療報酬ファクタリングは、医療機関等が国保・社保に対して持つ診療報酬債権を譲渡し、通常約2ヶ月かかる入金を早期化する資金調達手段です。

売掛先が公的機関で貸し倒れリスクが極めて低いため、審査のハードルが低く、手数料も低く抑えられる点が大きなメリットです。担保や保証人も原則不要で、赤字や税金滞納時でも利用できる可能性があります。

一方、国保連や社保への通知が必要なため、2社間ファクタリングに比べ入金まで時間を要する点や、依存による将来の資金繰り悪化のリスクには注意が必要です。

ファクタリング会社を選ぶ際には、手数料や信頼性、スピードを比較するとともに、請求額の約8割を前払いする「掛け目(留保金)」の仕組みを理解して、計画的に活用することが大事です。 資金繰り改善の手段として、診療報酬ファクタリングを上手に利用するようにしましょう。